研究概要 |
本研究の目的は、多核白血球が大量に産生する好中球走化因子、LTB_4の測定法の改良(感度の向上と測定の簡便化)と、その測定法を利用した小児の正常値の確立、および種々の炎症性、アレルギー性疾患(川崎病、気管支喘息、膠原病等)におけるLTB_4の役割を明らかにすることである。高速液体クロマトグラフィ紫外線吸光法をもちいて確立したLTB_4の基本的な測定法はすでに報告したが(臨床化学16:124,87)、現在、大倉らの開発したBr-DMEQを使用した蛍光法による定量法を検討中である。結果は来年度にはまとめて報告が可能と思われる。小児の正常値に関しては、多核白血球を回収しやすい新生児の臍帯血について検討した。その結果、新生児多核白血球は成人と比べてより産生能が高いことが明らかとなった(報告予定)。年令別の産生能に関しては、本年度は十分の検討ができなかったが、現在も数を増やして検討をつづけている。種々の病態におけるLTB_4の役割の検討に関しては、ある程度の結果が得られたので報告した。まず、重症の喘息児でLTB_4産生が低下していることを見出した(Acta Paediatr.Jpn30.209,88)。次に川崎症の患児について、病期をわけてその動態を検討したところ、回復期にその産生が高くなることが明らかとなった。冠動脈癌との因果関係は明らかにできなかったが、病態の解明に何らかの手がかりを与えるものと思われ、今後更に検討する予定である(Acta Paediat Jpn,inpress)。また、各種疾患で検討をおこなっているうちに、慢性好中球性白血病の患者で、LTB_4産生能は著明に低下しているにもかかわらず、走化能には異常を認めない症例を発見した。これはLTB_4が、走化においてsecnd messengerとに作用していないという実験的データを臨床的に示す貴重な証拠であると思われた(内科学会雑誌投稿中)。以上、LTB_4の測定法の改良をすすめると共に、臨床面での意義の解明にとりくんでおり、今後更に検討をつづける必要がある。
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