研究概要 |
生理的に重要なACTH放出因子であるCRHとAVPの遺伝子発現の調節機構を検討する目的で研究を行い以下の結果を得た。1.AVPmRNAの測定にはDupontNEN社の^<35>S標識合成オリゴヌクレオチドをプロ-ブとして用いる。in situ hybridization法を確立した。CRHmRNAの測定はGENOFIT社,NEN社による市販のCRHのオリゴヌクレオチドや我々の作成したものを使用して,αATP^<35>Sにより標識し何度もin situ hybridizationを試みたがいづれも失敗に終った。2.副腎摘除ラットでは血中ACTHは著増を示し,この時視床下部正中降起部(ME)のCRH濃度は1週間後には低下を示し,AVP濃度は逆に増加していた。視床下部室旁核(PVN)や視索上核(SON)のAVPmRNAは増加を示した。以上より副腎不全の場合のACTH分泌上昇には,AVPが一役を担っていることが示唆された。3.ラットに高張食塩水を負荷すると血中ACTHは変化を示さず,CRHはPVNやMEで変化せず下垂体後葉(NIL)で対照の4倍に増加した。一方,血中AVPは著増を示し,NILでは著減したが、AVPmRNAはPVNやSONで著明に増加した。4.絶水ストレスでは血漿ACTHが増加し,血漿AVPは著増した。CRHは視床下部,NILで変化せず,AVPはNILで減少を示した。AVPmRNAはPVNやSONで著増した。以上より絶水によるACTH上昇には,AVPの分泌が一部関与していると考えられた。5.絶食ストレスでは血漿ACTH,コルチコステロンは著明に上昇したが,血漿AVPは有意の変動を示さなかった。AVPmRNAのシグナルはSONで減少しており,PVNでも大細胞群で減少した。副腎摘除後,コルチコステロンのペレットを補充(低濃度補充)したラットではAVPmRNAはSONでやはり減少したが,PVNではむしろ増加していた。以上よりステロイドの影響のない状態では絶食ストレスはPVNのAVPニュ-ロンには刺激的に,SONのAVPニュ-ロンには抑制的に作用していることが示された。
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