研究概要 |
目的 血小板は血栓形成時に重要な役割をはたしており,この血小板の活性化には膜融合とC・キナ-ゼ活性化とが関与していると考えられる。しかし,その機序は不明である。これらを解明するために,今年度は,特異性の高いC・キナ-ゼ活性化剤として合成されたSC-10の効果を検討した。 方法と結果 ^<14>C-セロトニンを用いた研究で,SC-10は用量依存的にセロトニン放出反応を惹起し,100μMの濃度で効果を認め,500μMで最大の効果を示した。この濃度では,セロトニン放出反応が5分以内に認められ,15分で最大となった。 電顕的な検討でも,SC-10により膜融合が起きていることを確認した。昨年度,C・キナ-ゼ活性化剤によるCa^<21>動員をエコ-リン法を用いることにより認めた(微量高速冷却遠心器を購入し,使用した)。これにより,Ca^<21>依存性蛋白分解酵素(CANP)が,C・キナ-ゼ活性化剤による血小板活性化と膜融合に関与している可能性が推定された。したがって,SC-10によるセロトニン放出反応と膜融合に対するCANP阻害剤(E-64)の効果を検討した。E-64は,用量依存的にSC-10によるセロトニン放出反応を抑制し,電顕上もSC-10による膜融合所見を抑制した。 以上から,(1)特異性の高い合成されたC・キナ-ゼ活性化剤(SC-10)により,セロトニン放出反応と電顕上膜融合とが起きていることが証明された。(2)CANP阻害剤を用いた実験から,C・キナ-ゼ活性化剤(SC-10)による血小板活性化時の膜融合には,CNPが関与していることを示唆する知見を得た。以上の知見の一部は,1989年の国際血栓止血学会で発表した。
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