研究概要 |
造血支持細胞の産生するプロテオグリカン(PG)が造血制御に関与していることを示唆する多くの報告がある。しかし、どの様なPGが、どの様な機構で働いているのかは殆ど知られていない。私達は、これらの内容をより明確に理解するため、培養下で造血支持能を有することが示されているマウス新生児頭蓋冠由来の株細胞(MC3T3ーG2/PA6細胞)が合成するPGの生化学的性質及び、その造血における役割について解析を行ない、前半期の研究において次の事柄を明らかにした。1)細胞層に存在するPGは、分子量の異なる3分子種(CPGI;Mr=520,000,CPGII;Mr=175,000,CPGIII;Mr=51,000)及び、培養液中に分泌される1分子種(MPG;Mr=200,000)から成る、2)前者の3分子種PGの糖側鎖の主要成分はヘパラン硫酸であるのに対し、後者のそれは、コンドロイチン硫酸である、3)コンドロイチン硫酸鎖合成の人工的開始剤であるβーキシロシド存在下で培養したPA6細胞の示す血液幹細胞維持能は、1.2〜2.0倍増加する。後半期の研究において、造血幹細胞維持に寄与するPGが、細胞膜型であるか、マトリックス型であるか(或いは、その両者であるか)を検討するため、細胞層に存在するPGの局在に応じた分離を試みた。細胞層由来PG画分を4Mguanidine存在下でOctylーSepharoseCLー4Bにかけ0〜0.5%TritonXー100による直線的濃度勾配で溶出した。細胞層に存在するPGの約55%は素通り画分に、15%は0.03%TritonXー100の位置に、残り25%は0.2%TritonXー100の位置に溶出された。それに対して、培養液中には、分子中に疎水性部位を持つPG成分は全く検出されなかった。これらの結果は、PA6細胞は基底膜型(0.03%画分)及び細胞膜型(0.2%画分)PGを共に合成していることを強く示唆している。今後、PA6細胞を抗原とし、上記のPGに対する単クロ-ン抗体を作成し、それを用いて、基底膜型及び細胞膜型PGの造血幹細胞維持における役割を解析していく予定である。
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