研究概要 |
側鎖切断酵素(SCC)cDNA,21水酸化酵素(C21)cDNA,17α水酸化酵素cDNAを得て,大腸菌を用いて培養した。ラット副腎組織に存在するmRNAもウシSCC cDNA,C21 cDNAとクロスハイブリダイズした。ラットの下垂体摘除(Hypox)し、経済的にSCC、C21の2種類のP450mRNAを定量した。SCC,C21 mRNAの定量は,各々のcDNAを用いてNorthern blot hybridization及びDot blot hybridizationにより行った。その結果,SCC及びC21は共にHypoxにより減少したが,SCCの減少はC21より早く認められ,その程度も大であった。HypoxラットにACTHを投与すると,SCC,C21共に著明に増加したがSCCの増加はC21より早く認められた。この経済的な変化の検討から幅腎のSCCおよびC21mRNAはACTHにより少くとも部分的には転写の時点で制御されていると考えられた。ラット副腎におけるP450遺伝子とCーfos,Cーmyc及びβーactin遺伝子の発現調節をHypoxラットで検討した。P450SCC mRNAの増加にはCーfos産物が関与している可能性が示唆された。また、副腎細胞でのACTH作用の発現にはCーmyc遺伝子の発現は必要ないのかもしれないと考えられる結果を得た。また、ヒト原発性フルドステロン症患者から摘出した幅腎を瘍部と正常部に分け検討した。通常例と異なり、術前にデキサメサゾン抑制試験で抑制されない症状では、腫瘍組織において正常組織より17α水酸化酵素mRNAの発現が強く、通常例とは反対の結果であった。また、C21およびSCCも同様に腫瘍組織の方が強く発現しており、同一疾患の中にも特殊な形態でホルモンを産生している病態が解明された。
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