研究概要 |
糖尿病の増加とともに近年その治療方法である膵移植が注目を集めている。特に最近では新しい種々の免疫抑制療法の開発、手術手技の改善により欧米では膵移植の症例数は飛躍的に増加し又その成績の著しい向上もみられるようになった。本研究は臓器移植ではなく膵移植の目的である内分泌細胞のみを単離しこれをドナーとして用いるラ氏島移植の臨床応用の確立をめざすものである。ラ氏島移植の臨床応用上の課題は十分量のドナーラ氏島細胞を如何に確保するかにかかっているが又ラ氏島移植の為の新たな免疫抑制療方の開発も急務である。前者に於いて我々はインスリン産生ハイブリドーマを得るべくヒトラ氏島細胞とヒトリンパ芽球由来の細胞株(HO-32.3)の融合を行った。 現在細胞株の機能及び形態の検索を行っている。ラ氏島移植の免疫抑制法の開発に関し我々はラ氏島移植(細胞移植)では移植部位が免疫学寛容の導入、維持にきわめて重要であることを明らかにした。(Diabetes38(Suppl.1):304,1989,Transplant Prac, in press, Diabetologia, submitted for publication)又日本で開発された新しい免疫抑制剤(FK-506)のラ氏島移植における有用性を検討したがサイクロスポリンと比較し同等か又それ以上の有効性を明らかにし(Transplant Proc, in press)臨床応用への可能性を示唆した。 臓器移植ではなく細胞移植であるラ氏島移植は手技の簡便さだけでなく免疫学的にも有利な方法で一日も早い臨床応用実現の為今後の強力な研究の推進が望まれる。
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