研究概要 |
担癌胃切除標本4症例にホルマリン固定後,Alcainblue(PH2.5)染色を行い,実体顕微鏡で観察し,微細な腸上皮化生巣のみ存在している部分の粘膜を4ヶ所,長さ1cm,幅3mmに切り出した。それぞれの粘膜片を4-5μ間隔で約600枚の完全連続切片とし,Alcianblue-PAS染色下に観察し,ニコン社のコンピューターグラフィックソフト"コスモゾーン"にて種々の腺管の3次元カラー立体画像を作製した。その結果,以下の所見を得た。 1.萎縮幽門腺腺管の一部のみ腸上皮化生で置き変わった腺管では,増殖細胞帯から腺窩上皮部の一部にかけて上方向のみ化生上皮細胞に置き変わったものと,腺窩上皮部とともに幽門腺の一部も化生上皮細胞に置き変わったものとの両方が存在した。腺窩上皮の化生上皮細胞への置換は最初は全周性ではなく,腺管の一側面を楯の帯状に置き変えていた。 2.1腺管あたり杯細胞数5ケ以下,6-20ケ,20ケ以上の腺管の各々を色別に表示した粘膜腑観立体画像を作製した。その結果杯細胞数5ケ以下のいわゆる杯細胞化生腺管は杯細胞数20ケ以上の完成した腸上皮化生腺管の巣状の発生部に密接して多発していた。 以上の結果については第74回消化器病学会総会にて報告した。さらに 3.萎縮幽門腺部によく見られる嚢胞状拡張腺管と隣接腺管との関係を立体画像にて観察した。嚢胞状拡張腺管は特に萎縮の高度な腺管に密接しており,それらとの連続性が認められないものが多いが,痕跡的に萎縮腺管とつながっているものも存在した。腺管の萎縮に伴い幽門腺への分岐部に管腔閉塞または離断が生じ,さらに分離した幽門腺に分泌または増殖能のある細胞が残っている場合,嚢胞状拡張が生じるものと推測された。
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