研究概要 |
ゴ-ルデンハムスタ-(雑種)膵よりランゲルハンス島(以下ラ島)を分離し,プログラムフリ-ザ-を用いて比較的急速な冷却速度(25℃/min)による凍結保存を試みた。急速凍結保存の可能性と,その免疫原性の低下の有無を,非凍結培養ラ島を対照として検討した。 (1)解凍後のラ島の回収率は,Me_2SO濃度が15%の時でもっとも高く,25℃/minの冷却速度では83.2±13.0%と,1℃/minの82.9±4.1と同様の回収率が得られた。一方,組織学的検索でも解凍後のラ島の形態は、一部のラ島には凍結解凍の過程により被ったと思われる損傷がみられたが概して凍結以前のラ島と相違ない形態を保持し、免疫学的検索でもインスリン、グルカゴンの存在が確認され、その分布も正常ラ島と同様であった。 (2)凍結保存後のラ島のインスリン分泌能も,対照の培養ラ島とほぼ同様の分泌能を示し,細胞1個当りのインスリン含有量を示すインスリン/DNA比も,対照群や1℃/minとほぼ同等の値を示した。また、labelling indexからみた凍結ラ島の複製能も,対照群と同様であった。 (3)同種同系移植実験で,急速凍結保存ラ島約1000個の腎被膜下への移植によって,STZ糖尿ハムスタ-の血糖値は著明に低下し,8週目に行った腎摘によって血糖値の再上昇が観察された。HーE染色で,移植ラ島は腎被膜下に容易に観察でき,免疫組織学的検索ではラ島集塊に一致してインスリンが染色され,labelling indexの結果も両群間で有意の差はなく,良好な移植結果が得られた。 約300個のラ島移植後の血糖値は300mg/dl前後であり,糖尿病を完全に改善されるに至らなかった。これらの“suboptimal"なラ島数の腎被膜下,脾臓内への移植時のlabelling indexはそれぞれ0.88±0.19,0.28±0.03で,腎被膜下への移植がラ島の再生にとってより有利であると考えられた。 (4)異種移植実験では,対照群と同様に,移植後2〜3日後には血糖値の再上昇をみ,期待された凍結保存ラ島の免疫原性の低下を示唆する所見は得られなかった。
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