研究概要 |
教室では,胃癌の核DNA ploidy patternが浸潤様式,病理組織学的所見,及びEpidermal growth factor(上皮増殖因子:EGF)とそのレセプタ-(EGFR)とどのように関連しているかを検討してきた.さらに昨年度からは,近年各種の癌組織において増幅が報告されている癌遺伝子と,細胞増殖に関与すると推論されている uncleolar organizer regions(NOR)についても検討を行った. 1989年4月から1990年6月の間に教室で経験した胃癌切除症例53例(早期癌22例,進行癌31例)を対象とし,全例で核DNA ploidy patternの蛍光顕微測光法による測定,EGF,EGFRの免疫組織学的局在、硝酸銀染色によるNORの測定を行った.充分量の癌組織が採取可能であった28症例(すべて進行癌)についてはSouthern hybridization法によりerbB遺伝子の増幅の有無を検討した. (成績)(1)EGF陽性例は19例(36%)にみられた.深達度との関係では進行癌症例で有意に陽性率が高かった。DNA ploidy patternとの関係を検討すると,aneuploidを呈するもので陽性率が高い傾向がみられた.(2)EGFR陽性例は5例(9%)と他者らの報告に比し低率であったが,陽性例はすべてEGF陽性の進行癌であった.(3)NORは進行度に相関して有意の増加がみられた.DNA ploidy patternとの検討ではaneuploidではdiploidのものに比べ有意な増加がみられた.(4)erbB遺伝子の増幅は3例でみとめたが,すべて過進展の癌であった. (結論)EGFは細胞の核レベルでの増殖に関与すると考えられた.EGFRに関してはEGFによるdown regulationによる活性の低下が考えられた.従来教室で報告してきた如く,細胞核DNA ploidy patternは,細胞の増殖に深く関与すると考えられた.
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