研究概要 |
外科的肝障害におけるヒスタミン受容体拮抗剤の肝再生におよぼす影響の検索として、初年度はラットの70%広範肝切除を施行し,種々の拮抗剤(cimetidine,ranitidine,famotidine)を術直后、術后24および48時間後に投与し、その肝再生への影響を検討した。cimetidine(40mg/kg,筋注およびranitidine(0.8mg/kg,im)は残存肝細胞分裂を抑制するのに対し、famotidine(0.8mg/kgおよび1.2mg/kg)にはこの抑制効果がみられなかった。さらに、種々の拮抗剤を90%肝切除ラットで検討したところ、何れの拮抗剤も肝再生を抑制する結果がえられており、単なる構造式の違いというよりは、ヒスタミン受容体拮抗剤に共通の作用と考えられた。機序としては、現在、推測の域を出ないが、免疫反応と肝再生との関係を考えると、拮抗剤の免疫賦活効果が何等か関与していると推測している。さらに臨床肝切除症例(57例)を3群にわけて種々のヒスタミン受容体拮抗剤の残存肝への影響をRetrospectiveに検討した。ヒスタミン受容体拮抗剤としては、cimetidineおよびfamotidineを用い、術后30日まで、それぞれ臨床常用量を投与した。肝切除は亜区域切除以上であった。各群での在院死は一例もみられなかった。術后の血液生化学検査(GOT,GPT,TiBil,Alb)および凝固検査(Prothrombin timo)を各群間で比較検討したところ、少くとも臨床常用量に関する限り、臨床例においてはヒスタミン受容体拮抗剤による肝障害は確認されなかった。
|