研究概要 |
脳虚血時における局所脳の酸素分圧と神経伝達物質代謝の変動との関連性を知るためにラットにインビボボルタンメトリ-法を用い、1)吸気中の酸素濃度を変えた時の組織酸素濃度の変化を調べ、2)KClを静注して心停止を起させた時の脳局所のモノアミン神経伝達物質および代謝産物;DA/DOPAC,5ーHIAA濃度を測定し下記の結果を得た。 1)ラット線条体にカ-ボンファイバ-微小電極を定位脳的に装着し組織酸素濃度を測定したところ、空気を吸わせた場合は一定に保たれ呼吸性の変動は認められなかった。ラットを窒息させた場合は約5秒後から急速に低下した。逆に高濃度酸素(98%)を吸わせた場合組織酸素濃度は急激に上昇した後,やや減少し約3分でプラト-に達した。この電極は数ケ月後でもアクテイブであり慢性実験にも使用可能であった。 2)急性期完全脳虚血のモデルとしてKCl静注により心停止させた場合、線条体のDA/DOPACは10分後に900%に、5ーHIAAは300%に上昇し、共にその後徐々に低下した。Pulsinelliの4血管閉塞モデルにおいても略同様の結果が得られた。 以上インビボボルタンメトリ-法は同一個体の生体脳において組織酸素濃度とモノアミン代謝産物の測定が可能であり脳虚血時に於けるこれらの変化を経時的に捕え得る事はわかった。但しこれらの値は見かけ上の値であり局所のpH,温度等によって影響を受ける。正確な値を知るには虚血によって起こる脳局所のpH並びに温度変化等を如何に正確に測定し、それらによって補正出来るかが今後の検討課課として残された。なほ本方法は脳虚血に対する薬物治療の効果ぉ生体脳で連続的に見るのに有用と思われた。
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