研究概要 |
1.筋節長の生体内測定法の開発 筋線維に可視光を当てて生じる回折稿の間隔から筋節長を算出する光回折法を,血行,神経支配のある生体内の筋に応用した.光源としてはヘリウムーネオンレ-ザ-光を用いた. 2.生体内における静止筋の筋長と筋節長との関係 マウスの長趾伸筋に上述の生体内光回折法を行い,生理的な関節可動域内での筋節長と筋長との関係を観察した.筋節長は関節の肢位によって2.4μmから3.2μmの間を変動し,筋長との間には正の相関があった. 3.筋の持続的伸長にともなう筋節長の経日的変化 ギプス固定により伸長位を保ったマウス長趾伸筋の筋節長を1,3,5,7,14日後に測定した.伸長直後に3.0μmであった平均筋節長は次第に減少してほぼ7日後に平衡状態と思われる2.8μmとなった. 4.脚延長モデルにおける筋節長の経日的変化 家兎の一側の前腕骨を骨切りし,創外固定器によって前腕を一期的に3.5mm延長した.2,5,9,14日後に創外固定器を装着したまま全身麻酔下に生体内で指伸筋の筋節長を測定したところ,延長直後3.5μmであった筋節長が9日後には非延長側と同じ3.1μmとなっていた. 5.以上の結果は,筋が伸長されることによって一時的に伸ばされた筋節が,比較的速やかに,非伸長筋とほぼ同じ筋節長に戻ることを示している.これは筋線維の長軸方向の筋節数の増加によって説明できる.このような筋線維内の構造的な変化が筋長変化に対する筋の順応の本態と考えられた.
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