研究概要 |
高血圧自然発症ラット(SHR)の大腿骨々頭には、小児ペルテス病類似の無腐性壊死が高頻度に発生する。この病態解明のため、以下の目的で研究を行った。(1)大腿骨々頭の発育過程をX線学的に観察する。(2)組織学的に無腐性壊死の出現時期やその修復過程を検索する。(3)骨頭へ至る血管の途絶部位を明らかにし、血管閉塞のメカニズムを解明する。 実験には6,9,12,15,20及び40週令の雄SHR100匹と対照として同週令の雄京都ウイスタ-ラット(WKY)36匹を用いた。各週群それぞれ両側大腿骨を摘出後、軟X線撮影により骨頭の発育過程を観察した。組織学的観察のためには、大腿骨近位部のHE染色標本を作製した。さらに新鮮な無腐性壊死を示す14骨頭を用いて、骨頭の栄養に関与していると思われる血管を追跡するため、連続切片を作製した。 その結果、以下の知見が得られた。 (1)SHRではWKYに比べて、約60%の骨頭で骨化が遅延しており、また骨頭の扁平化や頸部短縮などの変化を伴っていた。 (2)組織学的に骨頭の無腐性壊死は、生後9週から15週の間に発生していた。 (3)この壊死骨頭には、まず骨髄腔に肉芽組織が侵入し、壊死骨梁は類骨添加により修復され、生後40週ではほぼ完全に治癒していた。 (4)無腐性壊死を来たす血管閉塞の部位は、骨頭外側の軟骨内貫通部附近であった。また閉塞部位周囲の関節軟骨や成長軟骨帯には、脆弱性を示す所見が認められた。 以上、成長期の雄SHRに好発する大腿骨々頭壊死では、骨頭の関節軟骨や成長軟骨帯に糸統的な異常がある事、その脆弱性のため軟骨管内を通過し骨頭内へ至る血管が機械的に閉塞される結果、無腐性壊死が発症する事などが示唆された。
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