研究概要 |
疫学的研究により女性の手術室従事者に、奇形児出生の確率が高いことが報告され、従来より用いられている揮発性麻酔薬の催奇形成が注目されているが、その詳細な因果関係は明らかではない。我々はこの3年間にddY,A/Jの2系統のマウスに対して、妊娠初期(11日目)胎仔の器管形成期に一致させて、ハロセン,エンフルレン,セボフルレン,(イソフルレン)の4種類の吸入麻酔薬を一定時間(8時間)吸入被曝させた。そして、妊娠18日目に帝王切開し、その胎児への催奇形成(口蓋裂発現率)、および吸入酸素濃度とその発現率の増減などの関係について実験的研究を行った。その結果、 1)ハロセン0.5%とO_221%、2l/min.のcarrier gasで吸入被曝させると、A/J係マウスの口蓋裂発現率は、35.70%であった。 2)エンフルレン0.5,0.75,1.0%とO_221%、2l/min.のcarrier gasで吸入被曝させると、A/J系マウスの口蓋裂発現率は、8.20,13.00,14.20%であった。 3)セボフルレン0.5,1.0,1.5,2.0%とO_221%、2l/min.のcarrier gasで吸入被曝させると、A/J系マウスの口蓋裂発現率は、0.00,10.30,12.80,16.20%であった。 4)carrier gasの吸入酸素濃度を増加(O_260,100%)させると、口蓋裂発現率は、減少傾向を示した。 従って、ハロセン,エンフルレン,セボフルレン,(イソフルレン)の吸入麻酔薬の麻酔作用が、胎仔器官形成期におよぼす影響(催奇形成)は、少なからず無視できないと考えられる。さらには、母獣から胎仔への十分な酸素供給の保持、または、増加が口蓋裂発現率の増減に大きく関与していることが示唆された。
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