研究概要 |
連続して撮影された超音波断層像をもとに,前立腺の完全な立体像を抽出した。前立腺は回転させて任意の角度からその形態を観察できるようにした。一症例に対し5〜10枚の断層像の形を入力した。立体像の合成は無人で自動的に行なえるようシステムの改良を行った。以下に正常,肥大症,癌における形態的な特徴を延べる。まず正常前立腺では,表面平滑,左右対称でもちろん大きさの腫大はない。直腸面での特徴としては,直腸内バルーンの圧迫のため,バルーンのあたる部位に一致して,軽い湾曲を認めた。正常前立腺の重要所見である中心溝については触診におけるほど明瞭なものは描出されなかった。恥骨面では中央やや上方よりで最大径を示し,この部分でなめらかにもりあがり,前後の厚みが増加した。肥大症では,肥大の程度により大きさは種々であるが,共通した特徴を備えている。表面は平滑で,左右対称,直腸面では軽い凹面を形成する。正常に比し,バルーンの圧迫による変形は少なく,その分やや充実性でやや硬い印象をうけた。肥大症では前後,左右,上下いずれの方向にも増大があるが,左右に比し前後方向への腫大がめだち,球形にやや近づく印象をうけた。前立腺癌ではまず腫大と左右非対称が特徴的である。直腸面での特徴は表面の凹凸不整像である。正常や肥大症例で認めるバルーンによる圧迫もほとんど認められなかった。 前立腺癌のホルモン療法下における縮少経過についても観察し,立体的な形態変化を考察した。進行癌ではまず表面の凹凸不整像が消失し,前立腺肥大に近い形態を示した。次いで正常前立腺の形態,さらに萎縮像を示すことも多い。この形態変化は抗男性ホルモン療法が,まず癌組織の縮少に効果があり,これにつづいて肥大腺腫の縮少に効果があることを示唆するものと考えられた。 前立腺表面の形態の癌の浸潤度判定にも有効であると考えられた。
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