先天性水腎症の腎盂平滑筋の生理薬理学的特性を知る目的で、先天性水腎症の手術時に得られる標本から小条片を作製し、腎癌の手術時に得られる正常腎盂、腎杯および尿管から作製した小条片と、マグヌス法により比較検討した。先天性水腎症の腎盂平滑筋はノルエピネフリン投与にて容量依存性にtonic収縮をおこし、この収縮はCa拮抗剤にて抑制されなかった。これに対して正常腎盂および尿管平滑筋はノルエピネフリン投与により、tonic収縮はおこらず、phasic収縮の頻度が増すのみであった。一方正常腎杯平滑筋ではノルエピネフリン投与により、先天性水腎症腎盂平滑筋と同様のtonic収縮をおこし、Ca拮抗剤による抑制を受けなかった。これらのことから、先天性水腎症腎盂平滑筋は尿管端勤のペースメーカーが存在するといわれている腎杯平滑筋と薬投与的性質が共通しており、正常腎盂、尿管とは性質が異なっていることが判明した。このことは、先天性水腎症の原因なのか結果なのかは不明であるが、先天性水腎症の尿流動態を考える上で重要な問題と思われる。また先天性水腎症患者に対する腎盂形成術後の改善状態を追跡調査したところ、今回みられたノルエピネフリンに対するtonic収縮の明らかな症例ほど良好な結果が認められる傾向がみられている。
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