研究概要 |
目的:ビタミンEの抗腫瘍機序として,抗酸化能,フリ-ラジカル除去能,免疫賦活能などがあげられている。この点に注目し,実験的膀胱腫瘍に対するビタミンEの抗腫瘍効果を検討した。実験材料および方法:ウイスタ-系雄ラットを3週齢より30週齢までビタミンE欠乏食(A),コントロ-ル食(B),ビタミンE40mg/100g食(C),ビタミンE60mg/100g食(D)にて飼育し,その間9週齢より8週間,各群に0.05%NーbutylーN(hydroxybutyl)nitrosamin(BBN)を投与した。30週齢時,心穿刺にて採血,屠殺し,膀胱摘出した。膀胱を前面で切開し,腫瘍の数,大きさを測定し,ホルマリン固定,パラフィン包埋した。病理組織標本をHーE染色にて作成,組織所見を過形成,乳頭状腫瘍,腫瘍異型度についてスコア化し,U検定にて評価した。免疫学的指標として,血液リンパ球数,フロ-サイトメトリ-によるCD_4/CD_8を大検定にて検討した。さらに,CD_4/CD_8と異型度,血中ビタミンE濃度との関連を検討した。結果:腫瘍の肉眼的評価では,腫瘍数において,AがBに比して多い傾向(P=0.085)を示した他,大きさに有意差は認められなかった。病理組織像では、過形成の上皮細胞層の厚さ,乳頭状腫瘍径において,AD間に有意差(P<0.05)がみられ,Aの細胞増殖傾向が強かった。異型度はAが最も高く,以下BCDの順であったが,有意差はなかった。免疫学的指標では,血中リンパ球数に差はなかったが,CD_4/CD_8はDが最も高く,以下CBAの順となり,異型度とCD_4/CD_8とは負の相関関係を示した(γ=-0.9)。考察および結語:本研究において,期待したビタミンEの抗腫瘍効果は明らかでなかったが,血中ビタミンE濃度,異型度,CD_4/CD_8の関連から,ビタミンEは濃度依存性に腫瘍細胞の抗原性増強に関与し,免疫学的にも抗腫瘍的に作用することが示唆され,さらに検討を要する価値のある問題であると考えられた。
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