研究概要 |
1.ヒト睾丸絨毛上皮癌細胞株JHYKー1の分化能と分化誘導物質の探索.分化能は、JHTKー1細胞を用いて、分化誘導物質による形態学的、化学的変化および増殖様式の変化により検討した。JHTKー1細胞は、1mM DBcAMP(dibutyrylcyclic AMP)処理により48時間以内に、細胞周囲に、細胞突起が出現はるなどの形態学的変化が観察され、HCGは15倍以上の分泌増加がみとめられた。免疫組織化学的染色では、HCG陽性細胞である合胞体型細胞の細胞数の増加がみられ、また細胞増殖能の著明な低下がみられた。以上の成績から、DBcAMPは、JHTKー1細胞を分裂を繰り返すランゲルハンス型細胞から終末分化細胞である合胞体型細胞へと分化誘導させたものと考えられた。一方JHTKー1細胞のHCG産生能の増加を分化の指標として分化誘導物質の探索を行い、sodium butyrate,Nーbutyric acid,vitamin C,dimetylsulfoxide,cisplatin,vinblastine,actinomycin D などに分化誘導能が認められた。 2.ヌ-ドマウス移植ヒト睾丸腫瘍株JTGー1の化学療法による分化誘導作用の検討.AFP産生性のyolk sac tumorであるJTGー1株を用いて化学療法による分化誘導実験に行なった。ヌ-ドマウスにJTGー1を移植後3週目からPVB療法に準じた化学療法(CDDP2mg×5.VBL0.1mg/×2,BLM0.5mg/kg×2)を施行した。治療開始後、血中AFP値の推移、腫瘍増殖、腫瘍内のAFP値の推移、腫瘍の組織学的変化を観察した。治療群は、治療開始後14日目まで腫瘍の縮小傾向がみられた。血中AFP値と腫瘍内AFP値は、対照群と比べ14日まで、約2ー4倍および40ー59倍の上昇を示した。組織学的にはreticular patternが目立つようになり、AFP陽性細胞の著明な増加がみられ、PVB療法によりJTGー1株が分化誘導された可能性が示唆された。以上のin vitroおよびin vivoの実験結果から睾丸胚細胞腫瘍が、抗癌剤により分化誘導される可能性が示唆された。
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