研究概要 |
前年度Fisher(F344)→Lewis ratsの系で作成し報告した慢性拒絶反応モデルは,蛋白尿の出現,高血圧,進行性の腎機能低下などヒト腎移植にみられる慢性拒絶反応と類似点が多かったものの,細胞性拒絶反応がみられるなど慢性拒絶反応と一致しない点もみられた。前年度のF344→LEWのモデルは,薬物(免疫抑制剤)等による影響をなくすためRTー1(主要組織適合抗原)の相違を利用して拒絶反応をおこさせ、その強さをコントロ-ルしたが,本年度はfully allogeneicの系を用い強い拒絶反応を起こさせ,免疫抑制剤,輸血等によりこれをコントロ-ルし慢性拒絶反応モデルの作成を試みた。WKA→LEWへdonor specific blood transfusion(DST)を行なった。後腎移植を行なったが,生着期間が一定しないこと,細胞性拒絶反応がみられることなどから実験モデルとしては不適当と考えられた。さらにBN→NEWへのDSTを行なった後腎移植を行なったが、これも生着期間が一定せず,細胞性拒絶反応もみられるなど,実験モデルとして評価がむずかしいと考えられた。 現在までの理論で考えると、慢性拒絶反応は液性免疫が重要と考えられており,病理学的にも血管型の拒絶反応とそれにともなう虚血性の変化が主要所見となっている。そこでわれわれは,腎移植のみならず,心移植の系も用いて慢性拒絶反応モデルの作成を現在試みている。心移植における慢性拒絶反応所見は冠状動脈に認められ,評価も比較的に容易であると考えられる。また心は腎に比べ拒絶反応の起り方に違いがあり,現在まで用いた系を用いても適当なモデルを得られる可能性もあり現在評価中である。
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