研究概要 |
歯周治療における理想的な治癒は、治療後の歯根表面においてセメント質の新生添加を伴なう歯根膜様構造物による新付着が生じることであり、この新生セメント質の形成には既存の歯根膜細胞が関与していると考えられている。そこで我々は歯根膜細胞が骨芽細胞やセメント芽細胞に分化しうるかどうかを知る目的で、ウシの歯根膜ならびに培養歯根膜細胞を用い、ウシの歯肉結合組織ならびに培養歯肉線維芽細胞との比較対照により、歯根膜細胞と胃芽細胞との機能的類似性について生化学的組織化学的な検討を行ったところ以下に述べる様な結果を得た。1歯根膜組織ならびに培養歯根膜細胞は著しく高いALPase活性を有していることが組織化学的に生化学的にも証明されたが、歯肉結合組織ならびに歯肉線維芽細胞ではほどんどこの酵素活性を認めなかった。2歯根膜組織のALPaseは骨型であることが示された。3歯根膜組織ならびに培養歯根膜細胞はPTHに反応し、細織内あるいは細胞内のCAMP量の有意な増加を示したが、歯肉結合組織ならびに歯肉線維芽細胞のCAMP量はPTHの添加により変化しなかった。4培養歯根膜細胞はウシのオステオカルシン抗体で検出されるタンパクを培養上清中に産生、分泌しており、その量は1.25(OH)_2D_3依存的に増加したが、25ーhydroxyvitamin D_3,24R,25ーdihydスoxyvitmin D_3,PTH,PGE_2は産生量にほとんど影響をあたえなかった。一方、歯肉線維芽細胞ではオステオカルシン様タンパクの産生を認めなかった。以上の結果より、歯根膜内には歯肉線維芽細胞に類似した形態をしているにもかかわらず、その機能は明らかに異なり、むしろ骨芽細胞様の形質を有する細胞が多く存在していると考えられ、これらの細胞は骨芽細胞やセメント芽細胞に分化し、歯槽骨やセメント質を形成する可能性を有することが示唆された。
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