研究概要 |
咀嚼運動時の外側翼突筋下頭の働きを明らかにすることを目的とし,成人男性8名について,右側外翼突筋(Lpt),咬筋,側頭筋の筋活動,ならびに切歯点下顎運動を同時記録し,筋活動と下顎位との時間的関係を分析し,以下のことを明らかにした。 1.咀嚼1ストロ-クのLpt筋活動時間の占める割合は,作業側で69,0%,平衡側で61,6%であった。2.作業側の開口相では,Lpt筋活動は最大開口位まで持続せず最小12m sesから最大81 mses以前に消失した。この筋活動の抑制は咀嚼側への下顎の側方移動に関連する。3.平衡側のLptの筋活動は最大開口位を越えて閉口相初期まで最小4m secから最大62m secの継続があった。この筋活動は閉口筋と協調した閉口相初期の下顎側方移動に関連する。4.作業側の閉口相終末から咬合相の初期にかけてのLptの筋活動は8名中6名に認められた。この筋活動には閉口筋との協調活動としての下顎の安定化としての役割が考えられる。5.作業側の咬合相では咬筋の活動消失後の咬合相後半にLptの強い筋活動が認められた。この活動は前側方咬圧の発現と関連するものと示唆される。6.咀嚼時のLptの筋活動パタ-ンは名被験者で異なり個人差が強かった。 以上のことから,ヒト外側翼突筋の咀嚼中の筋活動は開口時の下顎の下方移動と側方移動,また閉口相初期の側方移動に関連し,咀嚼運動の形成に大きな役割を果していた。また,咬合相後半の筋活動から,水平的咀嚼力の発現に関連していることが示唆された。
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