研究概要 |
対象および方法 対象症例は舌・口底の悪性腫瘍患者のうち外科的治療を行った11例で内訳は男性8名,女性3名および健常人8名である。超音波診断装置は,東芝ソノレイヤ-SAL35Aリニア電子スキャン型を使用し,部位は舌背前中部および舌背後方部の2部位を観光した。被検音は前中部は/a/、/i/発声時,後方部/a/,/ka/発声時とした。 結論 1. 超音波診断装置は舌運動を観察することができ舌・口底切除症例における舌運動様式を解析するのに有用な方法であると考えられた。 2. 舌切除症例では平均運動量が前中部,後方部とも健常人より少なく,運動量左右差,発音時左右差は前中部,後方部とも左右の差が著しく大きい症例が多かった。舌・口底の断面積は健常人と比較して,症例ごとの個体差が大きかった。 発語明瞭度は切除症全体では前中部62.2%,後方部59.5%であリ,切除量の多い症例では発語明瞭度は低い傾向を示した。また,前中部においては運動量が少なく,左右対称が低くても,発語明瞭度が極端に低い値を示さないが,後方部においては運動性,左右対称性が悪い症例において発語明瞭度が低い傾向がみられた。舌・口底の断面積と発語明瞭度との間には特に一定の関係は認められなかった。 3. 舌・口底の再出にあたっては機能回復を計るためには前中部においてもさることながら後方部においてはある程度の舌体積を確保することに加えて運動性,左右対称性を付与する事が必要であり,舌根部の可動性を保ち,左右差を10mm以内にすることが大切であると考えられた。
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