研究概要 |
中性子ラジオグラフィ-の歯科領域における利用を試み、以下の新しい知見を得た。 1,歯の中性子ラジオグラフィ-(NR)ではX線ラジオグラフィ-(XR)と逆の透過度のエナメル質と象牙質の像を得た。 2,中性子に対して大きい吸収係数をもつガドリニウムを用いることによって、歯へのガドリニウム水溶液の浸透性を画像として表わすことができた。 3,NRとXRの写真濃度をコンピュ-タ-処理し、合成することによって被写体の元素組成の違いを強調することができた。 4,XRで不透過像となる金属鋳造物がNRにより内部の形状を観察できた。 5,NRによって鋳造冠の内部におる歯の形態や築造体を観察できた。しかし歯科用合金は貴金属の含有量が多く、熱中性子の透過性も比較的低いため歯科の鋳造物に対する非破壊検査の適応は限定されることがわかった。 6,金属床のように薄い鋳造物の非破壊検査にはXRの方が有効であった。 7,NRではレジンと金属とを同時に観察できた。従って、ポ-セレンと金属またはレジンと金属の接合面の検査には、NRの方が有用と思われた。 8,歯科材料における鋳造巣、またはレジン内部の気泡の大きさは100μmあるいはそれ以下のオ-ダ-であるため、NRの解像度の向上が望まれた。 9,散乱によるビルドアップ効果を含んだ実効的な減衰係数を実験的に決定することは欠陥検出能力の推定に有効であることが明かとなった。 10,高速中性子ラジオグラフィ-により熱中性子線やX線では得られなかった画像を取得することができた。 以上の結果から、歯科領域において中性子ラジオグラフィ-はその特徴を十分に理解して用いることにより非破壊検査の有効な手段になりうる。さらに、X線像との比較や合成により、従来の方法では得られなかった、被写体の元素組成の差の強調なでの新しい情報を得ることが出来ると思われ、将来歯科領域にも広く利用されることが期待できる。
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