上顎犬歯とその対向歯が咬耗しているために咀嚼時にcuspid guided occulusionを示さない過蓋咬合者で、アングルII級1類の成人20名を実験群、cuspid guisanceを有し、balancing occlusal interferenceのない成人正常咬合者10名を対照群被験者とした。 実験1:各被験者の右側咬筋(浅部、深部)、側頭筋(前部、後部)より中心咬合位で前方、上方、および後方に向かって咬みしめ動作を行わせた時の筋活動をコンピュータによりオンライン記録、解析した。 実験2:対照群被験者のうち7名について実験1と同じ動作について前記の筋肉に加えて舌体部よりの筋活動を接着型小型表面電極を用いて記録した。 実験3:実験群被験者のうち5名について、チューインガム咀嚼時の筋電位と下顎の変位信号を記録した。次いで、同じ被験者の上顎左右の犬歯に、balancing occlusal interferenceを排除できるようなocclusal capsを18kゴールドにて製作し、これをセメント合着した後に、前記と同じ検査動作を記録した。このcapsを1日装着させたのち、前記の検査を繰り返し行い、データを記録した。得られた結果は以下のとおりである: クレンチ動作中の閉口筋および内舌筋活動は咬合力の方向に対して感度が高いことが示された。実験群では咬合力が後方に向かうようなクレンチ動作を行わせた時に、側頭筋前部および咬筋深部の筋電活動が優位を示す傾向が認められた。後方へ向かったクレンチを行った時の舌筋の活動電位は前方および上方へのクレンチ動作よりも有意に高かった。Occlusal capの装着によって、咀嚼のpathwayは変化した。すなわち、修復された上顎犬歯歯冠に対して、chopping strokesからgrinding storokesへの軌跡の変化を示すものが認められた。
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