研究概要 |
我々はすでに3価のタリウム[Tl(OCOCF_3)_3]を用いるジスルフィド形成反応を利用し、ヒトのαーおよびβーカルシトニン遺伝子関連ペプチド(cGRP)の合成を行ったが、63年度は新たに開発したSー保護システインスルホキシドを用いる新規ジスルフィド形成反応を用い、非哺乳類としては初めてその存在が遺伝子中に予想されたニワトリcGRPの合成を行い、先のヒト型cGRPとの生理活性の検討を行った。 1.保護ニワトリcGRPの合成 全体を7個の区分ペプチドに分け、これらを液相法により合成した後C端側より順次アジド法で縮合し、保護ニワトリcGRPを得た。なおこの時システイン誘導体としてCys(MBzl)とCys(MBzl)(O)(MBzl=pーメトキシベンジル,O=スルホキシド)を用いた。 2.ニワトリcGRPの全合成 保護ニワトリcGRPをトリフルオロ酢酸(TFA)ージフェニルスルフィド(PhSPh)処理し、Sー保護システインスルホキシド法によりCys(MBzl)とCys(MBzl)(O)の間でジスルフィド結合を形成させた後、IMトリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(TMSOTf)ーPhSPh/TFA系で処理し、ジスルフィド結合を安定に保ったまま残りの全保護基を除去して、各種クロマトにより精製し高純度のニワトリcGRPを得た。 3.ニワトリcGRPの生理作用の検討 合成ニワトリcGRPはマウス骨細胞を用いるin vitro assayにおいてヒトパラサイロイドホルモン(PTH1ー34)により促進される骨からの^<45>Ca遊離促進作用を抑制した。またこのニワトリcGRPの作用はヒト型(α,β)cGRPよりも強力であった。[発表、Chem Pher Bull.,36,3304(1988)]
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