研究概要 |
本研究者らは、クモ毒腺中には、グルタミン酸レセプターを特異的に阻害する物質を見い出した。この物質の本体の一つは、ジョロウグモ(Nephila clavata)では JSTX-3と、又オオジョロウグモ(Nephila maculata)ではNSTX-3と名付け、構造を決めた。これは、2、4-ジヒドロオキシフェニルアセチルアスパラギニル-ポリアミン構造を共有し、キレート化学上大変興味のある構造を有している。本研究では、これらの合成品と種々の金属イオンとの反応性を調べ、これらキレートの特性を調べると同時に生理作用機構を明らかにする その結果 1)JSTX-3とNSTX-3とは、Fe^<3+>と黄色の二核錯体のキレートを生成することが判明した。 2)クモ毒腺および胴体中には、プラズマ発光分析により、Fe^<3+>,Fe^<2+>,Cu^<2+>,Ni^<2+>,Zn^<2+>,Co^<2+>,Pb^<2+>などの金属イオンが高濃度に存在し、これらがキレート生成および解離しながら毒作用発現に関与していることが推定された。 3)JSTX-3およびNSTX-3以外の強力な殺虫作用を示す成分をN.Clavataの毒腺に見出し、これを高速液体クロマトグラフィーなどにより精製し、^1H-NMR,アミノ酸分析,ガスクロマトグラフィー及びマススペクトロメトリーなどにより構造を決めた。ポリアミンとペプチドの結合した成分で、新しい物質と判りクラバミンと命名した。 4)以上のように、クモ毒成分の種々の生理作用を解明するための重要な知見が得られた。
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