研究概要 |
ヒト胎盤よりsialidaseの精製を行い,55000倍の精製標品を得た(J.Biochem,<103>___ー,86ー90,1988)。精製標品はSDSーPAGE上78K,64K,46K,30K,20Kの5つの蛋白成分を観察したが,このうち30K,20K蛋白を単離した。また,牛脳から精製したβーgalactosidase(βーGal)多量体(J.Biochem.,<100>___ー,707ー715,1986)より32K及び20K蛋白を単離した。なお,牛肝臓のβーGalの精製を試み,脳の場合と同様単量体,多量体として精製され,多量体は30K,20K蛋白を含むことを確認した(Japan J.Exp.MeD.,<58>___ー,129ー139,1988)。次に単離した30(32)K蛋白,20K蛋白を家兎に免疫して抗体を作製した。抗32K抗体はヒト胎盤,肝及び牛脳βーGal多量体の活性を沈降させた。一方,抗30K抗体もヒト胎盤sialidaseのほか,ヒト胎盤及び牛脳βーGal活性を沈降させた。しかし,いづれもβーGal単量体には作用しなかった。また,抗30K抗体は牛脳32K蛋白と,抗32K抗体はヒト胎盤30K蛋白と強い交又反応を示した。これらの結果から30K及び32K蛋白は同種類の蛋白であり,βーGal多量体形成及びsialidase活性に何等かの係わりを持つものと思われる。20K蛋白は抗体産生能が低く,良い抗体が得られなかった。 βーGalの部分欠損を伴うsialidase欠損症,galactosialidosis患者の剖検肝を調せべる機会を得たことから,残存するβーGalについて調らべた。その結果患者肝に残存するβーGalも正常の場合と同様の分子種を持ち,多量体が存在することを確認したほか,抗30K抗体によるイムノブロットにより30K蛋白の存在を確認した。この結果はgalactosialidosisは32K蛋白の完全欠損に起因するとするオランダのグル-プの考え方と異なるものであった。 sialidaseの活性化現象について検討を行った。protease inhibitorによる阻害実験からsialidaseの活性化にはaminoーpeptidase様のprotease機能が作用しているものと考えられる。
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