研究概要 |
1.hEGFの酢酸潰瘍に対する効果を次の項目に従って検討した。 (1)酢酸潰瘍(自然治癒)に対する効果。雄性ドンリュウ系ラット(約250g)に酢酸潰瘍(20%酢酸0.015ml注入)を作成した。作成5日後よりhEGF30,100,および300μg/kgを1日2回皮下に2週間連続投与した。その結果、溶媒のみを投与した対照群に比較して、15.5%,47.9%(P<0.05)および47.9%(P<0.05)の治癒の促進がみとめられた。 (2)酢酸潰瘍(遅延治癒)に対する効果。酢酸潰瘍作成5日後よりインドメタシン1mg/kgを1日1回皮下に4週間投与することにより、潰瘍の自然治癒は著明に遅延する。この治癒の遅延した潰瘍モデルに対してhEGF30,100,および300μg/kgを1日2回4週間皮下にインドメタシンと併用投与した結果、40%,47.4%、および56.2%(p<0.05)の有意の治癒促進が認められた。 2.胃液分泌に対する効果。hEGF30,100、および300μg/kgの基礎分泌およびヒスタミン刺激分泌に対する効果を幽門結紮法および急性フィストラ法を使用して検討した。30μg/kgでは、基礎分泌に対して有意な効果はなかったが、100および300μg/kgでは、基礎分泌および刺激分泌に対して有意の抑制作用を示した。hEGFの抗潰瘍効果の機序としては、まずhEGFの抗胃酸分泌効果および上皮細胞増殖作用が関与していることは推定できる。 3.酢酸潰瘍の自然治癒に対する顎下腺の影響。顎下腺組織には多量のhEGFが含まれ、胃粘膜の保護に重要な役割を果していることが示唆されている。酢酸潰瘍作成5日後に顎下腺を摘出し、1,2,6,8週間後に剖見した。いづれの時点においても、潰瘍の大きさ・深さは対照群と比較して有意の差はなかった。この結果は、顎下腺由来のEGFは、少なくとも慢性潰瘍の自然治癒に影響を及ぼさないことを示した。
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