研究概要 |
本研究は、母乳、特に初乳に含まれる免疫グロブリンと感染防御物質のうち分泌型免疫グロブリン(sIgA)中のウイルス特異抗体を検出する系を確立することと、その定量を行い、合わせて母体血、臍帯血中の抗体量の比較することを目的とする。 対象として、20例の褥婦から分娩前後の母体血、臍帯血および母乳(分娩後2日から5日)を採取した。測定は酸素免疫法(ELISA)を主とし、特異抗体の測定にはこれに赤血球凝集抑制(HI)法を加えた。測定項目は、母乳中IgA量・sIgA量・sIgA量型麻疹および風疹抗体量、母体血・臍帯血中のIgA量・IgG量、麻疹・風疹抗体量を測定した。 母乳中のIgA量・sIgA量の測定条件は、ELISA系で(1) 抗ヒトIgA抗体の吸着、 (2)乳清(10,000rpm lhr4^゚C)、 (3)ペロキシダ-ゼ標識抗ヒトSC、 (4)基質OPD液、 (5)停止液4N H_2SO_4の手順のうち(1)は市販品1:1,000希釈、 (2)は1:4,000から4fold希釈、 (3)は市販品1:300が至適であった。 母乳中sIgA量は20例については1〜20、平均9,45mg/mlであった。母体血、臍帯血中IgG・IgA量は、前者は11.7と2.56、後者が10.7と<0.008mg/mlであった。麻疹、風疹抗体は、母体血と臍帯血中の陽性者は一致し、前者は19例、後者は15例であった。母乳中の各抗体の陽性例はHI法で測定した場合、麻疹8例、風疹11例、ELISAによるsIgA型抗体の場合前者16例、後者12例であった。 ELISAによるsIgA型抗体の検出は、母乳中に含まれる抗体の測定に適しており、今後各種の感染症特異抗体の測定に応用可能と考えられる。
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