研究概要 |
好中球、単球に代表される食細胞は活性酸素を産生し、侵入してきた細菌の排除にあたる。活性酸素産生には、細胞膜に存在するチトクロームb_<558>(Cytb_<558>)が重要な役目を担うと考えられている。既に我々はヒト好中球のCytb_<558>に対する単クローン抗体7D5を得ており、(Blood69,1404、1987)Cytb_<558>かつ細胞表面の存在することも示した。(Blood72、417、1988)本研究ではこの抗体を用いてFlow cytometryにより個々の細胞におけるCytb_<558>の量と活性酸素産生能の相関関係を調べ、Cytb_<558>の果たす役割について考察した。 正常ヒト末梢血の食細胞(好中球、単球)ではすべての細胞にCytb_<558>が存在し、活性酸素産生能も陽性であった。しかし、これらの食細胞の陽性領域における個々の細胞のCytb_<558>の含有量と活性酸素産生能には、比例関係はないことがわかった。これに対して、X染色体性慢性肉芽腫症(CGD)患者の食細胞ではCytb_<558>の全く含まれないもの(Classical CGD)があり、この場合には、活性酸素産生能は陰性であることが確認された。活性酸素産生にはCytb_<558>以外にフラビン蛋白、可溶性蛋白質等が関与していると考えられているが,上記の結果から、正常ヒト食細胞の場合にはCytb_<558>は充分量存在し、rate limitingな構成要素ではないと考えられる。 一方、我々はCytb_<558>の定量化の為に蛍光ラベルした7D5の量を変えて反応させた正常ヒト食細胞につき、Flow cytometryの測定を行ない、その蛍光強度から細胞上のCytb_<558>の相対量を知る検量線を作成した。この検量線を用いることより正常人のCytb_<558>を100とした場合、5%のCytb_<558>まで定量可能となった。これをX染色体性CGD患者に適用することにより、Cytb_<558>を全く含まない食細胞を持つ患者(Classical CGD)以外に正常人の約14%のCytb_<558>を含む食細胞をもつ患者(Vaviant CGD)を見出すことができた。これらの患者の好中球では、微少ながら活性酸素産生能を見出すことができた。
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