1.本研究の目的は新しく実験動物として開発された、スンクス(ジャコウネズミ、食虫目)において、中枢神経系の線維結合の詳細や機能を研究する為に電極を任意の場所へ刺入する指標となるような図譜(Stereotaxic Atlas)を作成することである。そのためには、まずスンクスに適合した脳定位装置を考案し、これによるスンクスの保定方法を確定しなければならない。ついで、その装置によって決定された軸に対する、スンクスの脳の位置関係を図譜として明示する必要がある。 2.初年度(昭和63年度)に於いては脳定位装置の作成を行った。スンクスも耳胞も外耳道も骨性ではなく、更に外耳孔の位置がげっし類に較べて甚だしく腹側にあるので、げっ歯類用のイア-バ-で頭蓋骨を固定しようとすると喉頭を圧迫して窒息させる。イア-バ-は基部径5mm、先端径3mm、長さ5mmとし基部に側頭稜を押える直径10mmの硬質ゴムまたは樹脂製のパットをつけることによって安定して保定出来ることを明らかにした。またTeeth-Barの高さを調節して頭蓋骨上面を水平に保った時、かなり安定してイア-バ-0の横断面が大脳縦裂の後端を通り充分実用化出来る程度に脳を定位出来ることも明らかとなった。 3.最終年度(平成元年度)には前年度から引続き作成した3方向の連続切片により個体に依る脳の大きさの変異、標本作製時の収縮等を補正するとともに、定位装置に依る電極刺入によって保定の安定度を検討した。この結果、背腹方向の基準面としてはイア-バ-0は使用することが出来ず、脳表面を基準面として用いるのが実際的であることが明らかとなった。 4.今後の研究の発展方向としては、作成した図譜を用いて実験神経学的に核や路の同定を行うと共に、画像解析ソフトを用いて核や路の位置を立体表示する方法を検討中である。 なお、図譜については図書として出版することを計画している。
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