研究概要 |
動物実験に係る倫理観は,国によって少しずつ異なっているが,法規制の方向は,近年,次第にひとつに収斂しつつある。動物実験を必要不可欠と考える研究者と動物実験に批判的な人々とが到達したひとつの調和点は,動物実験のオールタナティヴ(使用数の削減,動物の代替,苦痛の軽減,つまり,いわゆる3R)で,多くの国の法規制は、このオールタナティヴの実現を指向している。 私たちは,これまでにイギリス,フランス,スイス,ベルギー,スウェーデン,フィンランド,オーストラリア,中国,アメリカ,カナダ,アルゼンチン,その他の国々,さらには,欧州会議,世界保健機構,国際医学会議等の国際的組織から各種の法律,規則,指針を入手し,原文または訳文により比較検討を試みた。また,数十篇にわたる文献(各国法規等の解説)に目を通した。 その結果は「研究成果報告書」に詳述する予定であるが,法規等の表面に現われた文言だけでは,わが国の法規等によっても諸外国の法規制と同等のことが実施可能と思われるけれども,実験動物あるいは動物実験の規制に関して,法規等制定の趣旨や法規制の実態にはわが国と諸外国の間に大きな格差があるといわざるを得ない。 つまり,わが国の法規制には実験者,動物施設および実験計画のライセンス制度はないが,もしわが国の関連法規等を厳格に遵守すれば,わが国においても動物実験のオールタナティヴは実現可能である。しかし現実には,欧米流のオールタナティヴの実現は,わが国では困難であろう。その詳細な論考は,「研究成果報告書」において行なう。
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