研究概要 |
核酸系旨味調味料(イノシン酸、IMP:グアニル酸、GMP)の食品加工、調理過程における加熱分解挙動および他の食品成分との相互作用を解析した。まず、モデル水溶液系を用いてIMP,GMPの加熱分解機構を、反応速度論的な立場から以下のように明らかにした。両者は一次反応に従って分解し、反応速度定数はpH、温度により大きな影響を受け、両者ともPHが低いほど、温度が高いほど大きかった。100℃における半減期は、IMPの場合は8.7時間(pH4.0)、13.1時間(pH7.0)、46.2時間(pH9.0)で、GMPの場合は6.4時間(pH4.0)、8.2時間(pH7.0)、38.5時間(pH9.0)であった。IMPとGMPの加熱分解様式を解析したところ、リン酸エステルの加水分解とグリコシル結合(NーC結合)が起こるが、加熱分解過程で起こる主要な分解反応はリン酸エステル加水分解であることが判明した。次に市販の即席だしの素を用いて「だし汁」を調製し(IMPのみ含有)、実際の調理加熱過程におけるIMPの加熱分解を検討したところ、IMPはpH4とpH7では一次反応的に分解した。その反応速度定数は、PHが低いほど、また温度が高いほど大きかった。これは、先で述べたIMP単独溶液(モデル系)の場合の結果とほぼ同じであった。しかし、pH9でのIMPの分解は一次反応的な挙動をとらなかった。このことは、IMPがだしの素中の他の食品成分と何らかの相互作用をしたことを示唆する。また、だしの素粉末を水分活性0ー0.8,60℃で貯蔵したところ、IMPは水分活性0ー0.5ではほとんど分解しなかったが、水分活性0.8ではかなり分解が進み、他の成分との間に何らかの化学変化が起こったことが示唆された。核酸系旨味調味料と他の成分との相互作用で明らかになったことは、IMP、GMPが脂質の過酸化反応に対して抗酸化能を有することであった。この抗酸化作用の機構は、IMP、GMPが金属イオンにキレ-ト作用をすることによって起こることが明らかになった。
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