研究概要 |
真性粘菌Pyhsarum polycephalumが半数体のミクソアメ-バから2倍体の変形体へと分化する過程において、その膜画分にステロ-ルグルコシドが出現することを見出し、その物質と分離・精製して分析したところ、構造はポリフェラステロ-ルモノグルコシドであることが分かった(J.Biol.Chem.262、16719に発表)。又、その物質を合成する酵素、UDP-グルコ-スケポリフェラステロ-ルグルコシルトランスフェラ-ゼが分化に伴って発現することを認め、部分精製した酵素について諸性質を調べた。分子量は72,000、至適pHは7.0で、ポリフェラステロ-ルの他に、シトステロ-ル、カンペステロ-ルがよい基質となったが、ポリフェラステロ-ルのC-24エピマ-であるスティグマステロ-ルは、よい基質とはならなかった。UDP-グルコ-スとポリフェラステロ-ルに対するKm値はそれぞれ、1.2×10^<-4>M,4.8×10^<-6>Mであった(Biochim,Biophys,Acta 992、412に発表)。 また、Physarum polycephalumの突然変異体コロニア株は、ミクソアメ-バから核相の変化なしに変形体へと分化するが、この株では、ミクソアメ-バの時期から既にUDP-グルコ-ス:ポリフェラステロ-ルグルコシルトランスフェラ-ゼ活性を持ち、ポリフェラステロ-ルモノグルコシドを合成していることが分かった。また、この株は、野生株と比べてはるかに高いグルコ-ス取り込み能と、膜融合能を示す。 ステロ-ルグルコシドの膜における生理的役割を探るために、共に膜と構成しているリン脂質と、ステロ-ルグルコシドの前駆体である遊離ステロ-ルの動態について検討を行った。その結果、リン脂質組成とその分解酵素の活性が分化の過程で大きく変化すること(Biochim,Biophys,Acta印刷中)と、遊離ステロ-ル組成に僅かの変化があること(Cell Struct,Funct,12、519)を見出した。
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