我々はこれまで真核細胞発現用ベクターpSVを用いてセンダイウィルス遺伝子を細胞に導入しインターフェロン(IFN)誘発に関与する遺伝子の解析を行なってきた。この過程でpSVベクター及びその関連プラスミド標品中に微量に混在するRNA性因子が強力なIFN誘発活性及び細胞傷害活性を示すことを見い出した。このRNA性因子はpSV保持大腸菌をクロラムフェニコール処理によりプラスミドを増強させた時にのみ特異的に出現した。本研究はこのRNA性因子を精製しその化学的性質及びその起源を明らかにすることによりIFN誘発因子の成因を明らかにし、このRNA性因子を細胞質あるいは核へ直接注入しIFN誘発との相関を明らかにすることを目的としている。上記RNA性因子をIFN誘発活性を指標としてショ糖密度勾配遠心法等により精製した結果、約8Sの大きさを有すること、またRNase T_1、U_2、H、S1ヌクレアーゼでは失活せずdsRNAを特異的に切断するRNaseVIにより失活したことから二重鎖RNA構造を有することが明らかとなった。しかしRNaseAにより失活することから完全な二重鎖構造を有していないことも示唆された。RNA性因子の3末端を〔^<32>P〕-γ-ATPにより酵素的に標識することができた。〔^<32>P〕RNAの7M尿素存在下の8%アクリルアミド電気泳動像は200〜400塩基にわたる不均一なバンドでありIFN誘発活性のピークとほぼ一致していた。次に〔^<32>P〕RNA性因子をプローブとしてプラスミドpSV:pBR322、λファージ及び大腸菌HB101の染色体DNAとの相補性をサザンブロッティングにより解析した結果、大腸菌のDNAとのみ特異的にハイブリダイズしたことから、このRNA性因子が大腸菌遺伝子由来であることが示唆された。今後逆転写酵素等を用いてこのRNAの構造を明らかにしてゆく予定である。
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