研究概要 |
生物の運動に広く関与しているアクチンの原子レベルの構造をX線結晶解析を用いて明らかにすることを目指し,アクチンだけから成る結晶を得ることを試みた。これは,従来のアクチンの結晶解析がアクチンとDNaseI(またはプロフィリン)との複合体が作る性質の悪い結晶を用いたために不首尾に終わっているため,アクチンだけの結晶を作りその結晶解析を行おうとしたものである。 本研究では,膜蛋白の結晶化法に習い,アクチンの重合部位の非イオン性界面活性剤でマスクし通常の可溶性蛋白として扱えるようにして結晶化しようとした。しかし,実際に実験を行ってみると,オクチルグルコシドをはじめとする様々な非イオン性界面活性化剤を用いてのアクチンの重合能を除くことはできなかった。 そこで,アクチンの重合能を除く次のような幾つかの方法を用い,結晶化を試みた。(1)KIを共存させる。(2)アクチンについているヌクレオチドをゆっくりはずす。(3)N端末約70残基をはずされ,重合能を失ったアクチンを用いる。 現在のところ,(1)の条件下で,ポリエチレングリコールから0.1mmの結晶が成長中であり,また高濃度KIからは10μmの微結晶が見られた。また(2)の条件下では,飽和硫安から微結晶が出ているのを見た。いずれの場合も結晶が現れるのが大変遅かったので,未だ結晶が出ていない(3)の場合も含めて,これからの観察が必要である。 なおFアクチンができた場合でも,微結晶とおもわれるものが見られた場合があった。リン酸,ポリエチレングリコール存在下でその現象が顕著であった。
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