1.当該分野研究の背景として、大学一般教育における物理教育の動向調査を実施した。学習意欲の低下、入学者の高校における物理履修率の低下傾向、教養課程年限の短縮傾向など、教養課程は諸問題を抱えているのが現状である。この状況の下にあって、教育現場では、各種の改革への試みがなされている。 2.医学分野において、物理学の果たす役割は多大である。医学分野での医用物理学者の役割・必要性が近年高まりつつあり、専門家の養成も計画されている。医師は物理関連の知識をどれだけ修得することが必要なのか、について、日本医学放射線学会のカリキュラム案が、示唆を与えている。この分野には診療放射線、医用工学、臨床工学など関連技術分野があり、物理関連については医師は基本的内容を、医用物理学者や技術者が各論の詳細を学習・担当することになろう。 3.物理コ-スとして、「医学・ライフサイエンス」関連分野の題材を効果的に配置するもの、放射線医学関連から原子核・放射線などの分野において「高校物理」から「放射線基礎医学」まで、共通な物理学用語のもとに内容を発展させる展開など、特色のあるコ-スが可能である。診断装置の原理である生体情報入手の基礎にある物理計測法を基調にした「物理計測に重点をおいた物理コ-ス」を立案・設計した。 4.物理教育の活性化の試みとして、教育方法を改善し、学生が講義や実験に積極的に参加できる形態を開発し、実践した。教育方法については大学教授法の調査研究を実施した。実践的研究における講義では「情報処理の手法を導入した医学・ライフサイエンスにおける物理学」の総合的教育を、実験では現代的テ-マとして「高温超伝導」を導入し、それぞれ行った。
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