研究概要 |
1.モノクロロフェノールの脱塩素および中間体の単離と同定 昨年度分離した、Corinebacterium sp.No.8菌の休止菌体は4-クロロフェノールを強く代謝し、90%以上の塩素を遊離した。反応の中間体をTCLで単離した。中間体の質量分析の結果、分子イオン・ピークは144であり、標準品の4-クロロカテコールとMS、1R、NMRがすべて一致した。従って4-クロロフェノールはまず水酸化を受けて4-クロロカテコールを経た後、環開裂して塩素が脱離されるものと推定した。2.ジクロロフェノールの脱塩素および中間体の単離と同定(1)ジクロロフェノール資化性菌の分離 6種のジクロロフェノール(DCP)置換体を資化する細菌を検索した結果、2,6-DCPを脱塩素する細菌を分離したが、他の置換体に作用する菌は得られなかった。また分離菌は2,6-DCPにのみ作用し、他の置換体には作用しなかった。分離菌をArthrobacterと同定した。(2)休止菌によるジクロロフェノールの脱塩素 本菌による脱塩素に補助基質の添加が有効で、グルコースの添加により72時間以内に100%の塩素を遊離した。反応の中間体をTLCで単離し、GC-MS、1R、NMRにより同定した。質量分析の結果、分子イオン・ピークは144,FT-1R分析により1,2,3-置換のフェノール性物質であることより、本物質と3-クロロカテコールと同定した。2,6-DCPはまず1分子の塩基が脱離して水酸基を生じクロロカテコールを経て開環し、直ちにもう1分子の塩素が脱離するものと推定した。(3)モノクロロフェノールとジクロロフェノールの脱塩素反応の比較ジクロロフェノールは1分子の塩素が脱離した後、モノクロロフェノールと同様に相当するクロロカテコールを経て芳香環が開裂し、次いで1分子の塩素が脱離する共通の代謝系の存在が明らかになった。
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