研究課題/領域番号 |
63604502
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
上田 哲男 北海道大学, 薬学部, 助手 (20113524)
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研究分担者 |
加茂 直樹 北海道大学, 薬学部, 助教授 (10001976)
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研究期間 (年度) |
1988
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研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
1988年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
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キーワード | インテリジェント材料 / 自律的情報処理 / 化学パターン / 自己組織化 / アメーバ細胞の行動 / 自励振動 / 引き込み |
研究概要 |
本プロジェクトは、認識や判断まで含めたインテリジェント人工膜システムの開発を最終目的とする。単細胞生物の行動発現を見ると、脳や中枢神経系がなくとも、自律的に多くの構成分子を合理的に配列しシステム化しているのがわかる。今年度は、巨大なアメーバ型細胞である粘菌の光応答において情報が細胞内で判断・処理される化学的ならびに物理的原理を解明することに集中し、以下の成果を得た。 (A)光情報伝達・処理・行動発現の化学的側面: 光照射に伴う細胞内でのスーパーオキサイド生成の光波長依存性は光逃避行動の作用スペクトルと一致した。酸素欠乏条件下では走光性が発現しないので、O_2^-生成がシグナル発生と関連していると推測される。その後ただちに_cAMP、_cGMP、ATP、NAD(H)などの細胞内メッセンジャーの濃度が振動的に変動し始める。しばらくしてATP濃度の分布パターンが変化する。細胞行動にともなって細胞骨格(複屈折繊維)が再配列した。自律的に形成される化学パターンに従って細胞骨格系が再配列され、その結果として行動が誘導されることがわかった。 (B)細胞内における情報伝達・処理の物理的側面: 粘菌の収縮弛緩リズムの時間空間相関を調べた。局所的な刺激に対して振動数は変わらないが位相がずれ、自励振動子が相互に引き込みあう結果、細胞全体に渡り位相差の勾配が形成される。このベクトル場に従って、誘引あるいは忌避行動が起きた。逆に振動外場に細胞の固有リズムを引き込ませると、細胞内に位相差の勾配が人工的に形成され、これに従って行動が起こった。すなわち振動外場により細胞の判断を意のままにコントロールすることができた。以上のことから、自励振動子の集団が協同的挙動として作り出す位相ベクトル場が情報の伝達・処理に利用されていることがわかった。
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