研究概要 |
ペプチドホルモンの情報伝達において、脂質膜がペプチドホルモンとレセプターとの相互作用を規制していることが報告されている。また、ペプチドホルモンがレセプターに結合することにより、セレプターのクラスタリングの起こることが示されており、このことが情報変換にとって重要な意味を持つことが指摘されている。本研究では、オピオイドペプチドについて、その脂質膜分配性を高めたり、複数個のレセプターを架橋する様な多価リガンドを合成して、これらアナログのオピオイドレセプターへの親和性と選択性の制御について検討した。1.脂質膜親和性の異なるペプチドを結合したエンケファリンアナログ、YGGFLGP(KS'S'S')_2-OMe(S';Sar,1)、YGGFLGP(KPPP)_2OMe(2)、YGGFLGP(KA'LA')_2-OMe(A';Aib,3)を合成した。アナログ1と2は親水性が高く、オピオイドレセプターへの親和性は〔Leu〕エンケファリンアミドと同程度であった。アナログ3は両親媒性αヘリックスを形成して脂質膜に分配され易く、〔Leu〕エンケファリンアミドに比べてレセプター親和性は1桁減少したが、μレセプターへの親和性が向上して、δレセプターへの親和性と同程度となった。2.2個の〔Lue〕エンケファリンをスペーサーを介して結合した。2価リガンドを合成した。2価リガンドのレセプターへの親和性は減少したが、1個のエンケファリンから成るアナログに比べて、μレセプターへの親和性が僅かながら上昇した。3.デキストランをキャリヤーへ高分子に選び過ヨウ素酸による部分的酸化を行って、複数個のエンケファリンを有する多糖複合体を合成した。100糖ユニットあたり約1個のエンケファリンを導入した複合体は、オピオイドレセプターへの親和性がかなり減少した。これは、多糖の排除体積効果により、エンケファリン部位のレセプターへの結合が、妨害されたためと考えられる。
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