研究概要 |
今年度は昨年度にひきつづき、I-III-VI_2族半導体の、格子欠陥を制御して良質な結晶あるいは優れた機能性素子を生み出すのに必要な基礎データを得ることを目的に研究を行った。I族としてCu、III族としてGa、Al、VI族としてS、Seを主として対象とした。 1.CuImSe, 前回にひきつづき、不純物として過剰Im,Cd,Znをドープしたm形、ならびにSe過剰のP形試料について、Hall移動度、光吸収端をキャリア濃度の関数として測定した結果、移動度と吸収端に対する影響は、Im,Se,Cd,Znの順に大きく、m形ドープ材としてはZnが適していることがわかった。 2.CuGaS_2 われわれはGaAs基板上にCuGaS_2ならびにCuGa^<2x>Al_xS_2をエピタキシャル成長させることを試みた。低温で2.4ev、2.8evにピークを持つフォトルミネッセンス(P.L.)を観測したが、この試料のX線回折、組成分析の結果を検討したところ、Ga_2S_3ができているらしいことがわかった。 CuGaS_2は電気的には高抵抗であり、低抵抗化が困難とされているが、これとCuGaSe_2との固溶系においては、エネルギーギャップEgを著しく低下させないでp形低抵抗物質が得られる。われわれはCuGa(S_<1-x>Se_X)_2系のX≧0.1における状態図を作成し、光吸収、P.L.、電気的特性を測定した。興味深いことはx=0.5において格子定数の温度係数、Egの温度係数が異常に大きく、またHall移動度も通常の合金散乱から予想されるのとは逆に、X=0.5で最大となった。さらに真空中、S中、Se中でのアニーリングの実験結果から、CuGa(S_<1-x>Se_X)_2系におけるP.L.バンド(約2.0evピーク)はS空孔とアニオン空孔のドナアクセプタ遷移と考えられることがわかった。
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