半導体表面の構造のダイナミクスをレーザー分光法により研究する事を目的として、超高真空中でSi(111)表面に対し、QスウィッチNd^<3+>:YAGレーザーの高出力パルス(波長1.06um、繰り返し10Hz、時間幅2.5ns、最大250mJ)を2mmφ程度の領域に当て、第2高周波(SHG)を観測し、その偏光特性を研究した。試料は化学エッチングとアニールを繰り返す事により清浄化し、100℃程度の温度で測定した。 Si(111)表面よりSHGが観測された事により、表面超構造は、1、2、3、m、3m対称性のどれかを持つ事に限られる。有力モデルであるSi(111)DASモデルは、表面第2層まで考えれば基本格子間120°かつ大きさが等しい六方格子を持ち、6mmの対称性を持つが、これはSHGを発生させない。DASモデルからのSHG発生は、第3層におけるstacking favlt層を考えた場合、3m対称性の低下により発生する。 今回の実験において、結果を解析するとSHGの偏光方向が〔1^^-10〕の時3m対称性で期待される、同強度を持つ信号の4つlobeパターンが見られない。よって、表面超構造において、鏡面が存在しない事が結論できる。従って、実験結果から考えられる表面構造は、2の対称性か3の対称性しかないが、各lobeパターンのMAX点の強度化の違いから表面超格子構造は、2の対称性を持つと考えるのが妥当である。これはDASモデルとは矛盾する。決定的な結論を得るにはLEEDとの相補的な研究の必要がある。
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