1.自律複製開始領域の分離の試み Raji Cell DNAをEcoRIまたはHindIIIで完全分解し、pVC-Hgr(ハイグロマイシン耐性遺伝子)にクローン化し、12個ずつまぜてプラスミドDNAを調製し、Electroporation法によりHeLa細胞に導入した。複製能の検出は、(1)2日後に回収したEpisomal DNAをDpuI処理後、アガロース電気泳動にて解析、(2)一部をハイグロマイシンの培地で培養し、耐性コロニーの産生を比べた。現在まで約800個のクローン(断片の平均2Kb、合計1600Kb)を64のグループに分けて解析したが、自律複製するものは得られていない。この実験の問題点はクローンをまぜて解析したため、(1)、(2)のいずれの方法でもバックグラウンドが上がってしまい、効率が良くないARSは、検出されていないと思われる。現在、長いDNA断片(10-20Kb)を、lacZ発現ベクターにクローン化し、1クローン毎にtransfectionして、lacZの発現細胞数が減少しないことを第一の選別基準として実験中である。 2.C-myc遺伝子上流域のARS機能の解析 有賀らによって、ヒト及びマウス細胞中で自律複製することが報告されているc-myc遺伝子上流域のHindIII-PstI断片の複製能を、主としてHeLa細胞を用いて調べた。DNAの細胞への導入は、Electroporation法、及びリン酸カルシウム法を用い、導入条件はlacZ遺伝子の発現に依存した細胞の染色により至適化した。5%の細胞にDNAが導入される条件でc-myc上流域を持つプラスミドを導入し、2日後に回収したDNAについてDpnI抵抗性とMboI感受性の両方で複製分子の検出を試みた。酵素の分解条件はE.coli dam^ー株で調製したDNAを同時に加えて確認した。用いた条件下ではDNAの導入された細胞当り10分子が複製しておれば検出できるはずであるが、複製した分子は全く検出できなかった。
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