研究概要 |
(Na,K)ATPaseのβ鎖の機能をXenopus oocyteの発現系を通して以下の点で解析した。 1.糖鎖付加阻害剤ツニカマイシン存在下でoocyteを培養することにより、β鎖にのみ結合している糖鎖を欠く(Na,K)ATPaseを調整しその特性を分析した。ATP分解活性、ウワバイン結合活性、Rb^+輸送活性のすべてにおいて糖鎖の欠損は全く影響せず、機能に糖鎖は直接影響を与えないことを明らかにした。 2.mRNAα、mRNAβを時期をずらしてoocyteへ注射し発現産物の性質を分析した。 両mRNAが同時にoocyte中に存在するときは活性な(Na,K)ATPaseが形成されたが、例えばmRNAβを先に注射し十分量のβ鎖が発現しているoocyteに新たにmRNAを注射して発現させても活性な酵素は形成されなかった。すなわち活性なα、β複合体の形成は両蛋白質の翻訳時、あるいは翻訳直後でのみ生じることが示唆された。 3.β鎖のC末端側欠損変異体を作製しその機能を調べた。C末端側約半分を欠く変異β鎖は活性なATPaseを形成することができず、これはおそらくα鎖との会合性を欠ことに起因することが示された。したがってα鎖との会合には少なくともβ鎖のC末端側が関与していることが示唆された。 これらの結果はβ鎖は(Na,K)ATPaseの機能発現に必須であることを示しているが、機能を具体化していない。そこでさらにβ鎖の非常に保存的な3-non coding領域や、やはり保存性の高いシステイン残基へ変異導入し、β鎖の機能を探す手掛かりとしたい。
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