研究概要 |
(目的)ヒト成人ヘモグロビンは、97%が、アミノ酸 141個のα鎖と146個のβ鎖からなる、α2β2の4量体の形で存在している。それぞれの遺伝子は、αグロビンは、第16番染色体に、βは、第11番染色体に存在する。αグロビン遺伝子は、約3.7kbの感覚をもった、非常に類似のα2,α1遺伝子座から構成される。このα2とα1の間での遺伝子間不等交差が起こる結果、欠失、多重化がおこるものと考えられている。我々は、日本人一般集団において、遺伝子欠失、多重化の頻度を求め、さらに不等交差領域の遺伝子解析を行うことを目的とし、約650名の遺伝子スクリーニングを行った。(方法)αグロビン遺伝子α2,α1の外側で消化できる制限酵素には、Eco Rl,Bam Hl,Xba lがある。我々は、Eco RlとBam Hlの二重消化による第一次スクリーニングを行った。末梢血白血球よりDNAを抽出、Eco RlとBam Hlの二重消化後、αグロビンのcDNAをプローブとしてサザンブロットを行った。多重化遺伝子は、正常よりも大きいバンドとして検出される。三重化αグロビン遺伝子では、正常より3.7kb大きいバンドとなる。異常のバンドが検出された症例のDNAを、α2とα1との間で消化する制限酵素、Hpa l,Bgl ll,Sac lを用いて同様に第二次スクリーニングを行った。三重化αグロビン遺伝子では、3.7kbの過剰なバンドが検出される。(結果)三重化αグロビン遺伝子は、10例(0.008%)にみられ、欠失例は、認められなかった。(0.0008%>)(結論)αグロビン遺伝子における、不等交差の結果生じると考えられる三重化αグロビン遺伝子は、日本人集団では、約0.8%の頻度で見られ、欠失例よりはるかに多い。種々の調査により、グロビン遺伝子の欠失は、マラリアに抵抗性であることが示唆されているが、マラリアの影響が少ない日本においては、αグロビン遺伝子に関し、遺伝子の欠失は、多重化に比し、不利であると考えられる。
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