研究概要 |
β-ガラクトシダーゼ(β-gal)に欠損によるGMガングリオシドーシスは中枢神経系にGMガングリオシド(GM_1)の蓄積を起し、中枢神経症状を主に呈する疾患である。その成人型において運動失調を中心とした症例を見いだし、β-galの基質特異性が変化し、GMへの酵素活性が選択的に低下し、他の基質である糖タンパクへの活性は保持されていた。この為に天然基質に対する酵素活性の測定方法を確立した。[Naoi,at,al.,J.Chromat.426(1988)75]。次に正常ヒト肝ならびにGM_1ガングリオシドーシス成人型の症例の肝よりβ-galの精製を行った。[Mutoh,et al.,Biochem.biophys.Acta,964(1988)]。共に単一のタンパクとして精製され、タンパク化学的、酵素学的性状を比較検討した所、変異酵素の最小分子量は6万で正常酵素より5千少さかった。また至適pHは正常酵素と比べ酸性側にあり、当電点も3.5と正常酵素(4.5)より酸性側にあった。また酵素活性は天然基質のGM_1、人工基質4-メチルウンベリフェリル、β-ガラクトシドに対し共に低下していたが、前者に対するKm値が著明に増大しており、変異酵素がGM_1への親和性を低下させていることが明らかとなった。さらに中枢神経症状が主に運動失調に限局した機序につき検討し。脳内における酵素活性の分布につき検討したところ、小脳、脳幹部においてβ-gal活性が低いこと、また成人型GM_1ガングリオシドーシスの症例において特にそれらの部位に酵素活性が低下していること、またそこに、GM_1の蓄積があることを見いだした。またヒト脳内β-galの反応速度論解析より、大脳白質、小脳、脳幹部に大脳皮質と同様のものと、異なった性質をもつ2種のβ-galの存在が認められた。これらの部位では、いずれの酵素が特にこの疾患において変化を受けるかを検討中である。また両者のβ-galの精製を現在行っている。
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