本研究では、ストリング理論のコンパクト化について、特にオービフォールド上にバックグラウンド・ゲージ場を導入することによって、ゲージ対称性を破り、かつ世代数をコントロールする方法を開発した。これによれば対称性の群のランクを下げることも可能であり、素粒子の統一理論の研究に有効である。 ヘテロティック・ストリング理論において、E_8×E_8またはSO(32)のような内部自由度は32個のフェルミオン場によって表わされる。バックグラウンド・ゲージ場(以下単にゲージ場とよぶ)が導入されたオービフォールドの理論は、これらのフェルミオン場に適当な境界条件を課すことによって得られる。ゲージ場がカルタン部分代数に対応する成分のみをもつ場合は、これらの境界条件は互いに可換であり、これによる対称性の破れにおいては群のランクは下がらず、余分なU(1)対称性が残る。一般の非アーベル的なゲージ場の場合には、フェルミオン場に対する境界条件は非可換であり、この非可換性が群のランクを下げることになる。したがってゲージ場のゼロでない成分をコントロールすることにより、対称性を破るとともに群のランクを調節することができる。またゲージ対称性の破れは、対角化された境界条件の固有値のみによって決まるので、同じ固有値をもつようなゲージ場を導入したオービフォールドはすべて同等である。 この方法によれば群のランクが下がる場合も下がらぬ場合も統一的に扱うことができる。一例をあげると、E_8×E_8→SU(3)×SU(2)×U(1)×E_7×U(1)のように、群のランクを4だけ下げることが可能である。一般に対称性を破る際に、電弱相互作用の対称性は保存されねばらならないから、導入するゲージ場には制限があり、可能な対称性の破れを系統的に調べることができる。
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