本研究では、回転群Znによって作られる軌道体(Orbifold)から現実的な模型を導き出すことができるかどうかについて調べた。 E_8×E_8ゲージ対称性を持つ10次元ヘテロティック弦理論は重力相互作用および強・弱・電磁相互作用を内包し、かつ矛盾のない統一理論の有力な候補と見なされている。この、ヘテロティック弦理論の余分の6次元をコンパクト化し、またE_8×E_8ゲージ対称性をさらに小さな群に壊し、粒子場を派生させる手法として、6次元をトーラスにしてさらにそのトーラスおよびE_8×E_8ゲージ対称性を回転群Znで割るZn軌道体模型は、弦的相互作用が計算しやすいことなどにより非常に注目され、また精力的に調べられている。 この回転群Znの内、N=1超対称性を残すものはZ_3、Z_4、Z_6、Z_7、Z_8、およびZ_<12>だけであることが知られている。この内、Z_3軌道体からは4種類のゲージ対称群が得られることが知られているが、それらの群は大きすぎて、そのままでは低エネルギー有効理論になり得ない。その他の回転群より得られるゲージ対称群については、ほとんど調べられていなかったので、本研究ではそれらを調べ尽くすことを目指した。 現在のところ、Z_7とZ_4、Z_6についてはゲージ対称性および粒子場の表現の全ての解析が終わっており、Z_7はPhysics Letters B212(1988)33912、Z_4とZ_6はPhysics Letters B218(1989)169に掲載されている。残るZ_8とZ_<12>についてはゲージ対称性とUセクターの解決が終り、現在論文にまとめているところである。Tセクターについては解析中である。 さらに、このようにして得られたZn軌道体模型にWilson機構を導入して、ゲージ対称性をさらに壊し、より現実的な模型が見つかるかどうかについても研究を進めている。
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