研究概要 |
酸化物高温超伝導体"YBa_2Cu_3O_<7-x>"の単結晶はCuO+BaO系をフラックスとした自己溶媒徐冷法により育成されている。しかしこの場合結晶とフラックスが同一な化学元素からなるための固化したフラックスより結晶を化学的手法でもって取り出すことは困難であり、機会的に取り出さざるを得ず、育成結晶に悪影響を及ぼすことは明らかである。本実験では大形の単結晶を育成することと育成後の結晶を簡単に取り出せることの2点を考慮して、CuO+BaO系以外にYBCO結晶の育成に対して適切なフラックスを捜すことを試みた。現在までに酸化物単結晶を育成する際に用いられたフラックスは沢山あるが、本実験では代表的なフラックスを10数種類選択し徐冷法により実験を行なった。徐冷温度範囲は950〜600℃、徐冷速度5℃/hr、ルツボは白金製のものを、母剤はYBCO焼結体を用いた。フラックスと母剤の混合割合は80:20(wt%)である。(Li-,Na-,K-)アルカリ炭酸塩をフラックス用いた時には、いずれも多量の白金を含んだYBa_4Cu_2Oxの比較的大きな1×2×7mm程の黒色柱状晶が多数育成した。Pb0-PbF_2系の場合にはBa_2Y_2O_5結晶が、Li_2O-M_0O_3系の場合には針状晶CuOとBaM_0O_4結晶が育成した。KClやBaCl_2等の塩化物の場合にはCuO針状晶とCu_2Y_2O_5が育成した。KFをフラックスした時には母剤の組成比を変えて実験を行なった。例えば、YBa_2Cu_5O_<8.5>、YBa_2Cu_9O_<12.5>、YBaCu_2O_<4.5>、YBa_2Cu_2O_<5.5>等である。得られた結晶はCuO針状晶をBaF_2であり、母剤組成の変化にはよらず同一な結果であった。YBCO系化合物は高温フラックス中ではCu^<2+>、Ba^<2+>などのように個々のイオン解離しており、温度の低下とともに安定なCuOやBaF_2の析出に進むものと推定しており、新たな他のフラックスを捜すべきであろう。なお、簡単なKF-YBCO状態図などの作成も行なった。
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