研究課題/領域番号 |
63638504
|
研究種目 |
重点領域研究
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
佐久間 康夫 弘前大学, 医学部, 教授 (70094307)
|
研究分担者 |
赤石 隆夫 新潟大学, 医学部, 講師 (70018951)
|
研究期間 (年度) |
1988
|
研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
|
配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
1988年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
|
キーワード | 視床下部 / 腹内側核 / 神経成長因子 / 性的二型性 / 性分化 / テストステロン / ロード-シス |
研究概要 |
生殖にかかわる行動や内分泌を調節する機構を始め、脳には顕著な性差がある。遺伝的には脳は雌型に分化するようプログラムされており、発育途上の特定の時期に性ホルモンが作用すると、雄型に分化する。ラットでは、胎性18日目より出生後5日の時期に精巣由来のテストステロンが作用すると雄型の脳が誘導される。このことは、新生仔期の雌ラットにテストステロンを投与すると、成熟後の行動パターンが雄型となり、雌型の生殖行動の主要な要素であるロード-シス反射を示す能力が失われ、内分泌学的には性周期が消失して排卵が起こらなくなること、逆に雄ラット新生仔を出生当日に去勢すると、成熟後の内分泌処置により、雌として振舞う動物が得られることから明らかである。本年度の研究では、生殖行動ならびに内分泌調節系の性差の成立において、テストステロンあるいは脳内におけるその芳香化によって生じたエストロジェンの作用を仲介すると考えられる蛋白分子を同定する目的で、神経成長因子、上皮組織成長因子、およびインシュリンに対する抗血清が性ホルモンによる脳の性分化におよぼす効果を調べた。思春期発来の時期、性周期と排卵、ならびにロード-シス反射の有無を観察の対象とした。その結果、抗神経成長因子抗血清を投与した場合のみ性ホルモンによる脳の雄型化が阻止されることが示された。申請備品として購入した電気刺激装置を用いて神経生理学的検討を行なったところ、抗血清の投与を受けた動物では、ロード-シス反射を促進する視床下部腹内側核から中脳中心灰白質に投射する神経回路が、出生直後の性ホルモン処置にかかわらず雌型の特性を保持しており、成熟後の反射の出現に並行するかたちで興奮性の上昇を起こしていることを確認した。この観察は、抗神経成長因子抗血清の脳内投与による行動上の性分化の阻止が、視床下部腹内側核に発する雌型の神経回路の維持に依存していることを示唆する。
|